2015/01/11

宗谷岬 - 厳冬期 : 車両編

 さて、もうドコでもいけるぜ!という腕に自信ができたら、次は何で行くかを考える必要があります。
 例えば、さすがに行けないことはないかもしれないが、普段ツーリングで使ってるCB400SBで行くぜ!というのは腕を抜きにしても予算その他で非常に辛いと思われます。とりあえず以下の装備が装着可能なバイクを見繕う必要があります。

  1.  スパイクタイヤかつオフロード・スノータイヤ

     逆に言えば、これが出来たら、法律とか車体が絶望的に重いとかピーキーとか諸問題を無視すれば何でも行くことが出来ます。アイスレースではGSX-Rに凄まじいスパイク付けて、フルバンクで氷上を走ったりすることすらしています。

     一応書いておきますが、126cc以上のバイクで、路面が露出している場所以外でスパイクを使うことは法律で禁止されています。ということで、125cc以下のモデルになるべくしたほうがよろしいかと...

     そして、尖ったプロファイルのオンタイヤよりも、スノータイヤやオフロードタイヤみたいなプロファイルのタイヤのほうがよりいいのは間違いありません。

     現実的な視点で言うと、

    • BONSUN

      現在通販などで非常に簡単、かつ安価で手に入るスパイクタイヤBONSUNというのがあり、2.25-17/2.50-17もしくはスクーターサイズが装着可能な、スーパーカブはもちろん派生ベンリィや、一般的なスクーターではとりあえずBONSUN系を買っておけば行くことはできます。BONSUNの性能については後述。
    • ワンオフスパイクタイヤ

      現在、複数の店にてカスタムスパイクタイヤが製造できます。ただ、オンロードラジアルタイヤとかのトレッドにスパイクが打ち込める気がしないので、ブロックタイヤがあるモデルに限られると思います。

      F21インチ・19インチ、R17-18インチのなにがしかのオフタイヤ、別な所では、ハンター・クロスカブ、ミニモトの17インチというのもあります。超級の変態向き17インチラジアルのブロック(TKC80とかディスタンジア)もあるにはあります。

      BW'zなど向けの小径のももちろんここに入ります。

      もちろんBONSUNが付くバイクに、ワンオフスパイク装着ブロックタイヤを付けるのもアリです。
    • Kold Kutter装着可能タイヤ

      焼き入れした木ねじタイプのスパイク、KoldKutter(後述)を、様々な手段で装着することができるなら、想像できる全てのタイヤが使用可能だと思われます。それこそオンロードタイヤの裏にパンク防止シート付けて打ち込むとかも理論上は可能です。ただこれ単体で行こうとするとたぶん取り付け・取り外しが煩雑すぎて辛すぎると思います。

      当然BONSUN/遠慮気味なワンオフスパイクにしてKoldKutterで補うスタイルもアリ。

     のいずれかのタイヤであることが最低条件です。無論傾かないトライクに車用スタッドレスとかもあるにはありますが割愛します。
  2. FIもしくは寒冷地対応キャブ

     現地で絶対苦労が絶えない話として、キャブのアイシングが挙げられます。
    バイクは(車もかも)寒すぎる場所で動かすことを考えていないので、寒すぎる大気にキャブレターが晒されると、ガソリンが凍結して燃料が届かなくなるという現象が起きます。

     対策としては、キャブレター周りに風が当たらないように養生した上で、キャブレターにニクロム線でヒーターを作ってやる、またはキャブヒーター搭載モデルのキャブヒーターを移植するというのがありますが、燃調とかもいじる必要があるかもしれません。もちろん純正でキャブヒーターがないモデルは手探りでやるしかないです。

     ちなみにFIモデルは、ハーレー空冷みたいなクランキングが極端なモデルでなければ、何の問題もなくエンジン掛かります。アイシングも起きないので、エンジンなどがオーバークールしないなら養生も不要です。
  3. クラッチ操作可能/ギアレシオ調整可能なモデル

     出来ないバイクあるのか...?現地は常にオフロードを走っているようなものなので、クラッチでトラクションコントロールできると非常に快適だと思われます。
     
     あとは、速度なんて出せないので、0-60km/h前後に特化したかなりのローギヤードにしておくほうが快適なので、完全なMTバイクでスプロケ変更・カブでスプロケ変更・スクーターのWR交換などによるローギヤード化をしておくほうが安全です。
     
     クラッチ操作できないモデルでも、クラッチ操作・変速をしなくてよくなるようローギヤードにしておくとまだマシです。
  4. ある程度の積載、もしくはUL装備

     全部宿、宗谷もトイレ・バス停仮眠で帰ってから寝るみたいなケースだと、緊急装備くらいなのでいいんですが、キャンプしたいと言う人は、連泊もしくは宗谷泊に対応できるレベルの装備になるので、荷物が一切もてない・もしくは背負うだけでは足りないという状況では辛いもんがあります。

     逆に、全部雪洞・UL装備にしてしまって身軽にするというのも手ではあります。自らの野営スキルと相談して装備を決めましょう。

     じゃあフルパニア装備した上にリアシートにも鞄置いた上にザック背負って、フロントキャリアとフェンダーにも装備するって?積載量と運動性能は反比例するということをお忘れ無く。

     逆にファイターバイクみたいなリアシートがないような奴は、全部自分で背負う必要がありしんどいと思います。

     ただし、地吹雪やその他悪天候に対応できるビバーグ装備、バイクの故障などの応急装備は必須なので、それらは絶対持って行くようにすべき。
  5.  LEDでない灯火類+追加のリアフォグやハイマウントストップランプ装着可能モデル

     これ向こうの車みて思ったんですが、LEDの灯火モデルはもうそれは雪がつきまくってます。何故かというと、LEDは白熱電球に比べ温度が低く、雪が付いても溶けないからです。ということで、北海道行くときだけでも白熱電球にしたほうがよさそうです。事実ナンバーとかは10分でダメになりましたが、テールやヘッドに雪が付かないどころかつららできる=溶けているくらいだったので。純正でLEDのはもうマメに後ろチェックするしかなさそうです。

     あと、バイクのテールは全体的に狭く低く一個しかなく、かつタイヤの真後ろに対した保護もなく付いてるので余計着雪すると危険が高まるので、荷物の後ろ・人間あたりにハイマウントストップランプやリアフォグのような追加のランプをつける必要があります。リアフォグはバイクで上部に保安基準満たす形で付けるのは無理に近いですが。

     あとは人間に付ける分にはたぶん保安基準がないと思われるので、人間にも付けると良いかもしれません。

     注意点としては、常時リアに何か付いてるような状況になるわけなので、やはり車がリアについたら速やかに譲る、視界のいいときは消す(リアフォグは特に)などを心がけるようにしたいものです。
  6. ハンドルカバー・風防・フェンダー類

     これは無くても死なないという部類のものですが、やはりとてつもない量の雪が舞うので、人間を守る風防・ハンドルカバーと、テールランプ等々に着雪しにくくなる大きいフェンダーが装着できる、または自作するとよさそうです。

     気をつけなくてはならないのは、所謂ナックルガード類では完全に役不足らしいので、その手のガードを付けているバイクでも、さらにハンドルカバーを付ける必要があります。

     もちろんアイシングやオーバークール対策として、フェアリング類があるとなお良いと思われます。
  7. グリップヒーターやリアの追加ランプなどを動かす安定した充電系統

     いくら風が入りにくいとはいってもやはり手は辛いものがあります。冬グローブ+インナー付けていても一瞬で冷えます。そこでグリップヒーターが必須。

     どんなバイクにも付いて省電力な巻きタイプ・信頼性重視の高性能グリップタイプなどいろいろあります。そしてリアの追加ランプやモバイル機器の充電等々結構電気があると助かる局面はありますし、どうせ無駄にガソリン燃やすなら有効活用すべきです。

     あとは、寒すぎてバッテリーがすぐだめになるらしいので、直前に交換するのはもちろんなんですが、いざというときのために押し掛けやキックが出来るとなお良さそうです。
などの条件を満たすバイクとしては...

  • スーパーカブ系
    • 格安スパイクタイヤBONSUNをいつでもどこでも入手可能。
    • そもそも北海道郵便配達に対応しているプロも認める厳冬期バイク
    • 低重心による安定感
    • クラッチレスによるハンドル保持
    • 低速重視によるローギヤード性
    • チェーンカバーによるチェーンのダメージ低減
    • FIモデルはアイシング無効かつバッテリー死んでもキック使用可能というサバイバビリティ
  • ビジネスバイク系(Benlyなど)
    • BONSUN使用可能
    • クラッチによるトラクションコントロール
    • ニーグリップ可能
    • わりかし安定した車体
  •  オフロードバイク
    • メガエンデューロから50ccオフまで全て悪路を走るためのバイク
    • ワンオフスパイクタイヤ基本全て可能。
    • ミニバイク以外は余裕のある足回りにより悪路でも快適
    • クラッチ付いてるモデルが多い
    • モデルによってはタンクや積載性能に余裕がある
     
あたりが現実味のあるバイクだと思われます。 大穴としてTricityみたいなフロント二輪というのもありますが、今年は居ませんでした...

2015/01/09

宗谷岬 - 厳冬期 : ライディング技術

 はじめに

 若い頃、自転車を手に入れて以来、これならかなりの距離でも旅行できる!と喜んで、どっちかというと(バイク乗りが車を嫌うが如く)エンジン付きに対する偏見すらありそうな感じでしたが、とあるテレビ番組で、風間深志氏が、給油3回でロシアまで行くみたいな企画があるのを見て衝撃を受け、それ以来バイク道にどっぷり使っていたわけですが...

  ホンダがクロスオーバーイメージのクロスカブを発表/発売したことにより、カブによる厳冬期ツーリングに挑む機会だと思い、泣く泣くセロー250限定カラーを下取りに出し、クロスカブを購入。その日から宗谷を目指すことになりました。

 宗谷岬バイクで行ってみたいけれど、きっかけがないという人がいたら、これを読んでその一助になれば幸いです。

  1.  バイクは腕が全てである

     昨今バイクも安全を無視するわけにはいかず、各社こぞって安全装置の開発に力を入れているのはご存じの通り。

     しかし、自動運転すら実用化されつつある自動車とは違い、バイクは残念ながらまだまだ腕が物を言います。エンデューロレーサーとメカニック用意するからエルツベルグ行ってこいって言われても無理なように...

     ということで、スパイクタイヤやらその他装備を充実させるのも必須なんですが、それよりもまずオフロードライディングの腕を磨くことが非常に重要だと思われます。

     スパイクを活かすためにバイクを寝かさず走る、フロントが滑っても対処できるなどは、オフ車にトライアルタイヤ付けて練習するのがよさそうです。滑りやすい路面で滑ってくれ、堅い路面ではてきめんグリップするのでハードな道中も移動でき、かつその手の路面でブレーキが使えるので、ブレーキングの練習もできます。そしてトラタイヤは平らなのでバイクが寝ないので、寝かさず走る運転にも最適です。

     とりあえず行くバイクが決まったら、オン車であろうがオン車であろうが、オフロード走り回るといろいろ見えてくるところがあります。
  2. 道中は公道である

     これが道無き雪原をひたすら攻略する行程なら別になんでもいいんですが、幸か不幸か苫小牧・小樽から先は公道です。

     どういうことかというと、まず交通法規を遵守する必要があります。ただもちろん地元の人の巡航速度とか、雪道にバツグンの効果を発揮するイエローバルブの高年式車両への搭載や、126cc以上のスパイクタイヤの装着などは別にそこまで口を酸っぱくして言うつもりはありませんが、まあダメということは頭にいれておいたほうがいいですね。

     一番重要なのは、地元の人に迷惑をかけるような運転はもちろん、交通事故、警察のご厄介になるような運転は慎むべきです。
     
     あと、普通の道でももらい事故であったり、不届きなドライバーによる危険な行為が行われることも当然あります。そのリスクを積む防衛運転のカンも研ぎ澄ます必要があります。なんせそんな装備で来る奴が悪いと言われかねない行程なので、他人の分も安全にするくらいの気持ちが必要です。

     そして、昨今の車の技術やタイヤ性能の向上により、非常に流れが速い(70km/h超はザラ)ので、車を後ろに付けて同じ速度で走るというのは非常にリスキーで、かといってド真ん中を悠々走るのも違反(追いつかれた車の義務違反)なので、車をなるべく早く譲って後ろに車を付かせない自制心も求められます。
  3. 常に転けることを念頭にいれつつ、コケ方を覚える

     残念ながら、滑ります。スキーと同じで、本当にどうしようもないときは、バイクと一緒に絡まって大けがするより、バイクになるべくダメージを与えない形で転倒させつつ、自身も怪我のないようなコケ方をする必要もあります。

     スキーなどやっていると、バイクで転ける練習するより低リスクで転けたときの体裁きが練習できるのでおすすめです。あとはオフロード走行で、走行中から危ないときに怪我のないレベルで、バイクを立ちゴケまで持って行くという練習をするとより効果的です。走って転けるより停まって転ける、停まって転けるより、どうしようもなくバイクを寝かすほうが、車体人間ともどもダメージを少なくできます。

     ただ向こうは舗装路以外全部氷の板みたいになってるので、引っかかって吹っ飛ぶというよりは、スキーのアイスバーンみたいになるので、適切な装備と安全な速度で、安全に転倒すれば、以外にダメージはありません。ここで2が物を言います。自分は安全でも後ろの車や対向車が止まることができるかどうかは別なので...


 とりあえず、技術で思いついたところはこれくらい。次はバイクのカスタムについてまとめたいと思います。